2009年12月31日

鬼蟻村マジック/二階堂 黎人

 宴席の最中だった。突然部屋の中に入ってきたのは「鬼」―祭で使う鬼の面をつけ蓑をまとった「鬼」だった。鬼はいきなり客に斬りかかり、部屋を飛び出していった。そして別の部屋に入りこんだところで、幻のように消え去ったのだった。それから七十年、「鬼」はふたたび現れ、人々を惨禍に巻き込んでいく。畳みかける不可能犯罪に水乃サトルが挑む。

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 本書、“鬼”が突然現れて軍人を斬って消えてしまうという戦前に起きた不可思議と、酒造を営む地方の旧家で起きた凄惨な連続殺人事件を、変人美形探偵水乃サトルが解き明かすもの。
 旧家に古くから伝えられてきた風習や秘められた怨念を暴くという内容は、横溝正史を彷彿させるものがある。鬼の姿をした男が、密室から消失するという不可能犯罪には目を惹くものがあるる。また、トリックにも感心させられた。

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2009年8月24日 読破


at 13:27|PermalinkComments(0)二階堂 黎人 

2009年12月29日

目線/天野 節子

 閑静な高級住宅街に佇む堂島邸には、主人である新之助の誕生祝いのため、家族や友人ら11人が集っていた。だが、「めでたい発表がある」と言っていた新之助は、自室のベランダから飛び降り、亡くなってしまう。その死は、自殺として処理されたが、飛び降りる直前に掛かってきた電話の内容は誰にも分からなかった。そして、初七日。哀しみに沈む堂島邸で、新たな犠牲者が出る。謎に包まれた事件の真相を究明するべく、3人の刑事が独自の捜査を開始した。

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 描写は極めて細かい点にまで注意が行き届いて、一つ一つの会話を丁寧に読み進めていかないと事件の真相に辿り着けない。ストーリー的にはよくある内容で、これといって奇抜なものではなかったが、トリックは唸らせるものがあった。

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2009年7月5日 読破


at 18:35|PermalinkComments(0)天野 節子 

2009年12月24日

僕と『彼女』の首なし死体/白石 かおる

 おそるべき横溝チルドレンの登場!!冬の朝、渋谷ハチ公前。僕は生首を置きにゆく。『彼女』の願いを叶えるために――。

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 僕こと白石かおるは商社勤めのサラリーマンだ。自宅で切り落とした女性の首を渋谷の街角に置き、ある「知らせ」を待っている。だが僕の望む進展がないまま、自宅に何者かが忍び入り、保管してある遺体から右手の指を切り取っていったのだ。後に切り取られた指は池袋の公園で発見される。不気味な模倣犯の目的は一体なんなのか。そして数日後、東京を襲った地震が事態を一気に加速させてゆく。
 本書、第29回横溝正史ミステリ大賞選考会にて、北村薫氏の強力プッシュにより優秀賞を受賞。主人公のキャラクターそのものがまさに「ミステリ」である。あらゆる意味で異色のこの作品は、横溝賞の系譜に新風を吹き込み、ライトノベル的要素を計算したうえで新しい構成要素として提示してる。

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2009年7月5日 読破


at 16:10|PermalinkComments(0)

2009年12月21日

湯原温泉

 師走に入り忘年会が続いているなか19、20日と部署の忘年会で湯原温泉へ行ってきた。今季一番の寒波に見舞われての山間部行きで、雪の心配をしていたが路面には雪がなく、19日は取り越し苦労で終わった。
 旅館に着き早速、温泉に浸かり、上がってからビールをゴクゴクと…ぱぁ~。ジョッキ 上手い。その後、待ちに待った宴会 乾杯 で焼酎のお湯割りをゴクゴクと… 熱燗 をチビリチビリと頂いた。腰を据えて飲めるとあって心置きなく飲むことができた。料理の方も“作州牛ステーキ会席” + 平目をベースに青物と貝類の“舟盛り”とあって、食べきれないほど豪華で満足のいく一夜だった。拍手

 
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 日が明けた20日は、朝から雪が降っていた。観光もせずに旅館でお土産を買い、一向に止みそうにない雪の中、帰路に着いた。

at 17:23|PermalinkComments(0)

2009年12月19日

球体の蛇/道尾 秀介

 1992年秋。17歳だった私・友彦は両親の離婚により、隣の橋塚家に居候していた。主人の乙太郎さんと娘のナオ。奥さんと姉娘サヨは7年前、キャンプ場の火事が原因で亡くなっていた。どこか冷たくて強いサヨに私は小さい頃から憧れていた。そして、彼女が死んだ本当の理由も、誰にも言えずに胸に仕舞い込んだままでいる。
 乙太郎さんの手伝いとして白蟻駆除に行った屋敷で、私は死んだサヨによく似た女性に出会う。彼女に強く惹かれた私は、夜ごとその屋敷の床下に潜り込み、老主人と彼女の情事を盗み聞きするようになる。しかしある晩、思わぬ事態が私を待ち受けていた……。
 青春のきらめきと痛みとを静かにうたい上げる、道尾秀介の新境地。あの頃、幼なじみの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった……。狡い嘘、幼い偽善、決して取り返すことのできないあやまち。矛盾と葛藤を抱えて生きる人間の悔恨と痛みを描く、人生の真実の物語。

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 本書、これから葬儀に向かう主人公が葬祭場に行き着くまでの間に過去の出来事を振り返るメモワール作品である。現在30代前半と思われる主人公の一人称「私」が思い出を語る行く展開となっている。
 17歳の友彦は、居候する橋塚家の死んだ娘、サヨに似た女性・智子に出会った。狂おしく恋焦がれるあまり、彼女の情事の盗み聞きにおぼれてしまう……過去の事件やゆがんだ家族を巡り、友彦の魂がさまよう物語の中核は「ウソ」。ウソをのみ込み生きる人生の不可解さは、透明な球体に雪景色のジオラマを封じ込めたおもちゃ、スノードームに象徴される。
 向日葵(ひまわり)の咲かない夏』始め大胆な仕掛けを配した作品で評価されてきた著者であるが、今回はそれを避けたものとなっている。ミステリーとして読むとコケる作品である。

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at 08:27|PermalinkComments(0)道尾 秀介