矢口 敦子

2009年12月15日

あれから/矢口 敦子

 高校1年の千幸と中学3年の夕美姉妹は、ある朝、父が電車内で痴漢をし、咎めた男性を線路に転落死させたと知らされる。二人は偶然出会った大学生たちの力を借り、父の汚名を晴らそうとするが…。10年後、看護師として一人働く千幸の前に、忌まわしい過去を彷彿させる女性が現れる。そして、哀しくも驚くべき真実が明らかになる。

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 主人公・千幸の父親が痴漢をはたらいたとして逮捕されるが、取り調べの隙をついて飛び降り自殺を図る。父親は本当に痴漢をはたらいたのか?青年を突き落としたのか?千幸と妹は偶然知り合った大学生の協力を得て、共に真相を突き止めようとするが、真実はうやむやのまま、やがて妹は自殺、母親は病死。
 家族崩壊という悲惨な状態に追い込まれながら、生い立ちをひた隠しに生きてきた主人公だが、内容的には重くなく、読みやすい作品ではあったが単調なストーリー展開や、ラストにもうひと捻り欲しい感は否めない。なんとなく物足りなさが残る作品であった。

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2009年6月19日 読破


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2008年11月09日

本格ミステリ館焼失/早見 江堂

 森の中の閉ざされた館が崩れ落ち、そして誰もいなくなった!?愛する叔父の死の真相を探る奈々緒、その驚愕の結末とは?本格ミステリーへの愛と蘊蓄に充ちた傑作が誕生―これぞ、21世紀の「ザ・火沼(?)マーダー」だ。

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  本格ミステリ館焼失
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 ミステリー作家の巨匠が死んで一年、その一周忌のため、彼にゆかりのある人々が人里離れた館に集まる。その館は、彼の作品に出てくる部屋をモチーフにした数々の部屋だった。そして、その夜一人また一人と招待客が消えていく。ショック
 これだけを聞くとアガサクリスティーの“誰もいなくなった”を思い浮かべるが、本書は、似ても似つかぬものであった。冒頭は、オカルトムードから始まり、招待客中の一人の視点から物語が進んでいく。作中の大部分を占める館での内容は、単調なままに終わり、人物描写に於いても中途半端な感じが否めない。また、ラストで明らかにされる犯行の動機は、説得力に欠けるものだった。悲しい
 著者(早見江堂)は、矢口敦子の別名義のようだ。

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2008年03月29日

愛が理由(矢口 敦子)

 閉め切った部屋で火鉢を使い、携帯を握りしめ笑顔で死んでいった親友の美佐子。死の真相を追う麻子の前に現れたのは、少女と見間違えるほどの美貌の少年・
 美佐子の甥の友人で、美佐子とも面識があり、学校で密かに流行っているらしい「心中ゲーム」のことを麻子に教えた。それは、年上の女性を巧みに誘惑し、心中を持ちかけて相手だけ死なせるというものだった・・・。

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  愛が理由
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 友人の死に不審を抱いた主人公が、死の謎を解き明かすべく行動する。そのうちパートーナーとなる人物が現れ、心惹かれてしまう。共に真相を追うこととなるが、謎は深まるばかりで、次第に主人公自身も渦中に巻き込まれ困惑していく。おまけに真犯人は心惹かれた相手だった。ということはよくあるプロットだ。
 本書の場合も同じようなプロットではあるが、女同士の友情、そして大人の女と少年の恋愛を上手く噛み合わせたサスペンス仕立てになっている。しかし、内容的にはイマイチ。主人公が回想するシーンがやたらと多いのにはウンザリさせられる。また、死の直前に見違えるように美しく、生き生きと変身していった美佐子や主人公の麻子が、美貌の少年・泉と出合ったことにより美しくなっていく態が伝わってはくるが、麻子のミイラ取りがミイラになってしまうところはイタダケない。ラストでも麻子が混乱し追い詰められていく様子は理解に苦しむ。女性の目線で読めば良かったのかもしれないが…、どうも消化不良を起こしたようで満足感は薄いものだった。悲しいこの作品、明らかに女性向である。

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